2026.05.08

作動油とは?役割、使用例を解説!

札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課

この記事を書いた人

札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課

出光テクニカルマスター潤滑油1級 / 2級機械保全技能士

油圧作動油・工業用ギヤ油・グリースなど幅広い潤滑剤の性能・使用・管理方法に精通した専門チーム。省エネ油の導入シミュレーションを通じ、企業の経費削減・カーボンニュートラル推進もサポート。

作動油がどのような役割を果たしているのか、詳しくご存知でしょうか。油圧システムにおいて、ポンプの動力をシリンダやモータへ伝える「エネルギー伝達の媒体」となる液体を指します。機械の“筋肉の血液”とも呼ばれており、動力伝達のほか、内部の潤滑、防錆、冷却、シール(密閉)作用を同時に担う、重機や工場設備に不可欠な油です。この記事では、作動油の具体的な役割や種類について詳しく解説していきます。

作動油の主な役割

作動油は単なるエネルギー伝達の媒体というだけでなく、機械全体を正常に機能させるための多様な役割を担っています。それぞれの働きを正しく理解することは、機械の寿命を延ばすことにもつながるはずです。ここでは、5つの主要な機能について詳しく見ていきましょう。

📈

動力伝達

ポンプの圧力を、シリンダやモータへロスなく伝える最も基本的な役割

🧰

潤滑作用

金属部品間に油膜を形成し、摩耗・焼き付きを防ぎ長寿命化を実現

🔒

密封作用

微細な隙間を油膜で塞ぎ、内部の高圧を保持してパワーロスを防止

冷却作用

稼働中に発生する熱を吸収・循環させ、オーバーヒートを防ぐ

🛡

防錆作用

防錆剤入りの油膜が金属面をコーティングし、錆・腐食から保護

動力伝達

作動油の最も重要な役割は、油圧ポンプで発生した機械的な圧力を、実際に機械を動かすための強力な力として伝達することにあります。液体は外部から大きな圧力を加えられても、その体積がほとんど変化しないという物理的な性質を持っているからです。大規模な工事現場でショベルカーが土砂を持ち上げる際、ポンプの圧力が作動油を介してシリンダの隅々まで伝わり、巨大なアームを動かします。小さな力を大きな力へと効率的に変換し、システム全体にロスなく伝えることが最大の目的と言えるでしょう。

潤滑作用

機械内部の金属部品同士が激しくこすれ合う部分の摩擦を減らし、摩耗を防ぐことも非常に重要な役割として挙げられます。油圧機器の内部では、ギアやピストンが常に高速かつ高圧で接触しているため、油のサポートがなければすぐに焼き付きを起こしてしまうからです。微小な隙間に油膜を形成し、金属同士が直接接触しない滑らかな状態を作り出すことで、部品の劣化を防いでいます。高品質な作動油で適切な潤滑が維持されれば、故障リスクを大幅に下げ、長期間の安定した稼働を実現できるはずです。

密封作用

作動油には、機器内部のわずかな隙間をしっかりと塞ぎ、圧力の低下を防ぐための密封(シール)作用も備わっています。油圧システムは非常に高い圧力を利用するため、部品間の隙間から油が漏れると本来の力が逃げてしまい、正常に作動しなくなります。激しく金属部品が動く箇所において、粘り気のある油膜が形成されることで、微小な隙間をパテのように塞いでいるのです。作動油自体がゴム製のパッキンのような役割を果たすことで、内部の高い圧力を保ち、パワーロスを防いでいます。

冷却作用

稼働中に発生する高熱を吸収し、システム全体を安全な温度まで冷やす冷却機能も、欠かすことができない役割となっています。油圧機器は作動時に摩擦熱などが発生しやすく、放置すると油の劣化や機器の致命的な損傷を招いてしまうからです。高温の熱を吸収した作動油は、システム内を循環しながらオイルクーラーなどの冷却スペースへ移動し、効率よく外部へ熱を放出します。この絶え間ない循環サイクルによって、機械全体がオーバーヒートすることなく動作し続けることが可能となります。

防錆作用

機械の内部にサビや腐食が発生するのを未然に防ぐ働きも、作動油が持つ大切な機能の一つに数えられています。大部分が金属で作られている油圧機器は、水分や結露によって内部にサビが生じると、重大な故障の引き金になるためです。多くの作動油には防錆剤が添加されており、金属表面を油膜でコーティングして水分や酸素から保護しています。目に見えないサビによる経年劣化から機械を守ることで、油圧システムを安全に使用できるよう強力にサポートしているのです。

作動油の種類

作動油には、使用される環境や目的に応じてさまざまな種類が存在し、それぞれ異なる成分が配合されています。適切な作動油を選ぶことは、機械の性能を最大限に引き出すために欠かせません。

種類 特徴 主な用途
一般作動油
R&Oタイプ
防錆剤や酸化防止剤を含み、汎用性に優れています。 軽負荷の油圧機器、一般的な工場設備に用いられます。
耐摩耗性作動油
AWタイプ
高圧・高速環境でも焼き付きを防ぐ添加剤を含んでいます。 建設機械や高圧プレス機などで使用されています。
難燃性作動油 引火しにくく、火災のリスクを大きく低減できる仕様です。 ダイカストマシンや製鉄設備などで活躍しています。

1

一般作動油(R&Oタイプ)

幅広い油圧機器で使用される最もスタンダードな作動油です。Rust(防錆)とOxidation(酸化防止)を目的とした添加剤がバランス良く配合されており、一般的な工場設備や軽負荷で稼働する工作機械などに広く導入されています。非常に汎用性が高くコストパフォーマンスにも優れているため、多くの製造現場で基本の作動油として最初に選ばれることが多いでしょう。

2

耐摩耗性作動油(AWタイプ)製造現場で最多使用

非常に厳しい条件下で長期間稼働する機械の保護に特化した特殊なオイルです。高圧や高速で激しく動く油圧ポンプなどでは、通常の作動油だと油膜が途切れてしまうため、摩耗を防ぐ極圧添加剤を加えることで油膜が破れにくいよう設計されています。過酷な環境下でも機器本来のパフォーマンスを維持するために必須のアイテムです。

3

難燃性作動油

万が一システムから油が漏れ出しても火災に発展しにくいという、非常に強力かつ安全な特性を持っています。溶けた金属などを扱う高温の現場では通常の鉱物油系作動油が引火しやすく大事故につながるリスクがあります。JIS B 9938の指針にも分類されており、ダイカストマシンや製鉄設備など火災リスクが懸念される現場で、作業員の命と設備を守るために使用されます。

▶ 参考基準

難燃性作動油の分類はJIS B 9938:2019「油圧-難燃性作動油-使用指針」に基づいています。使用現場の条件を確認のうえ、適切な種類を選定してください。

作動油の主な使用例

作動油が実際にどのような場面で活躍しているのか、具体的な機械を挙げながら解説していきます。私たちの生活や産業を支える多くの場面で、この油が縁の下の力持ちとして機能していることがお分かりいただけるはずです。

建設機械

ショベルカー 建設現場

建設現場で活躍する多種多様な大型の重機には、作動油がまさに筋肉の血液として必要不可欠な存在となっています。巨大な土砂を掘り起こしたり、重い資材を高所へ吊り上げたりするには、油圧システムがもたらす強力なパワーが絶対的に求められるからです。

主な使用機械

  • ショベルカー(アーム操作)
  • クレーン車(ブーム伸縮)
  • ブルドーザー(ブレード操作)

これらすべてのダイナミックな動きに高圧の作動油が使われており、大規模な土木工事は作動油の確実な働きなしには成り立ちません。

産業用機械

射出成形機 工場

モノづくりの最前線である工場の中枢設備においても、作動油は非常に幅広い用途で昼夜を問わず使われ続けています。製品の精密な加工や成形を行う際、ミリ単位の精度を保ちながら強力な圧力をかけ続ける必要があるため、油圧の安定性が求められます。

主な使用機械

  • 射出成形機(プラスチック製品の成形)
  • プレス機(金属板の打ち抜き加工)
  • 工作機械(高精度な切削加工)

精密かつダイナミックな動きが同時に要求される産業用機械において、作動油は日本の製造業を根底からしっかりと支えているというわけです。

その他(特殊車両・船舶)

船舶 ハッチカバー

大型の機械以外にも、乗り物などのより身近な場面で油圧システムは日常的に利用されています。限られた狭いスペースの中で効率よく力を伝達する必要があるため、パイプを通って自在に動く油圧の仕組みが非常に適しているからです。

主な使用場面

  • トラックのダンプ機能
  • 大型船舶のハッチカバー開閉
  • 特殊車両の各種油圧機構

身近な特殊車両から大型の船舶に至るまで、作動油は適切な管理のもとで幅広い領域において活躍しているのです。

🔧 一般的なメンテナンスの流れ

STEP 1

電源を安全に切り、劣化した古い作動油をドレンから完全に抜き取る

STEP 2

フィルター・ストレーナーに付着した汚れを清掃、または新品に交換する

STEP 3

メーカー指定の新しい作動油を適正量までゆっくり注入し、試運転を行う

まとめ

この記事では、作動油が持つ多面的な役割と、様々な産業での活用方法について詳しく解説してきました。

役割

動力伝達・潤滑・密封・冷却・防錆の5つを同時に担い、油圧システム全体の健全性を維持する

種類

一般作動油・耐摩耗性作動油・難燃性作動油の3種類。使用環境に合わせた選定が重要

管理

定期的なメンテナンスと適切な種類の選定で、機械のパフォーマンスを最大限に引き出す

日常の建設工事で見かけるショベルカーや工場で稼働するプレス機など、これらはすべて作動油のサポートによって安全に動いています。適切な種類を選定し、定期的なメンテナンスを心がけることで、大切な機械のパフォーマンスを最大限に引き出していきましょう。

札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課

この記事の監修者

札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課

出光テクニカルマスター潤滑油1級 / 2級機械保全技能士

自動車エンジンオイルから工業用ギヤ油・油圧作動油・グリースまで幅広い潤滑剤に精通した専門チーム。最新の環境対応型オイルや省エネ油の導入シミュレーションを通じ、企業の経費削減・カーボンニュートラル推進もサポート。