2026.05.08

主な作動油の3種類を用途別に解説!作動油の使われるシーン別にご紹介

「作動油の種類が多くてどれを選べばいいかわからない」「現場の環境に合った作動油の選び方を知りたい」——そうお悩みの方に向けた記事です。

作動油には石油系・難燃性・生分解性など複数の種類があり、用途や環境に合わせた選択が機械の安全稼働に直結します。この記事では、作動油の種類ごとの特徴・用途・選び方を、ISO粘度規格(VG)の解説も含め網羅的に解説します。

📋 この記事でわかること

  • 作動油の役割と基本構造
  • 石油系・難燃性・生分解性などの種類ごとの特徴と適した現場
  • 種類別の一覧比較表
  • ISO VG規格による粘度の選び方
  • 現場別のおすすめ作動油早見表・FAQ

作動油とは?役割と基本的な仕組みを理解する

作動油とは、油圧装置の中で動力を伝達する媒体として使われるオイルのことです。「油圧作動油」「ハイドロリックオイル」とも呼ばれ、建設機械・工作機械・製造ラインなど、あらゆる産業現場で使われています。

作動油の4つの役割

① 動力の伝達

ポンプからシリンダー・モーターへ圧力を伝え、機械を動かします。小さな力で大きな力を生み出せるのが油圧の最大の特長です。

② 潤滑作用

金属部品の表面に油膜を形成し、摩擦・摩耗を防ぎます。潤滑性能が高いほどポンプや軸受の寿命が延びます。

③ 防錆作用

油膜が金属面を覆い、酸素や水分の接触を遮断することで、さびや腐食の発生を抑制します。

④ 冷却作用

高圧・高速で動く部品が発する熱を吸収し、システム全体の温度上昇を防ぎます。

作動油が使われる主な機械・設備

  • 建設機械(油圧ショベル・クレーン・ブルドーザー)
  • 工場設備(プレス機・射出成形機・工作機械)
  • 製鉄所・鋳造設備(圧延ライン・ダイカストマシン)
  • 林業・農業機械(チェーンソー・トラクター)
  • 航空機・船舶の油圧システム

作動油の種類一覧【比較表】

作動油は大きく「石油系」「難燃性」「生分解性」の3カテゴリに分かれ、さらに細分すると以下の種類があります。まず比較表で全体像を把握しましょう。

種類 主な特徴 難燃性 環境対応 コスト 主な用途
石油系(一般・R&O) 最も普及。防錆+酸化防止 × 低い 工場・プレス機
石油系(耐摩耗性) 高圧・高速対応。極圧剤配合 × 中程度 建設機械・重機
石油系(高粘度指数) 温度変化に強い。広温度域対応 × 中程度 寒暖差の大きい屋外機械
難燃性(含水系) 水分含有で燃えにくい 中程度 ダイカスト工場
難燃性(合成系) 高潤滑+難燃を両立 高い 航空機・製鉄所
生分解性 微生物分解可能。環境配慮型 中〜高 林業・河川工事

※上表は代表的な性質を示したものです。メーカーや製品によって性能は異なります。

【種類①】最も普及している「石油系作動油(鉱物油系)」

作動油の中で最も広く使われているのが、原油を精製したベースオイル(基油)に添加剤をブレンドした石油系(鉱物油系)作動油です。建設機械から工場の製造ラインまで、産業現場の大部分で使用されている標準的なオイルです。

石油系作動油の基本構造

石油系作動油は「ベースオイル+添加剤」で構成されています。主な添加剤は以下のとおりです。

酸化防止剤:熱・空気による劣化を抑制
さび止め剤:水分・酸素の接触を防止
消泡剤:キャビテーションを防止
耐摩耗添加剤:高圧下の金属摩耗を低減

石油系作動油の3つの種類

1

一般作動油(R&Oタイプ)

R&Oとは「Rust(さび止め)」と「Oxidation(酸化防止)」の頭文字。低圧〜中圧の油圧装置に最適な最もオーソドックスな種類です。

用途:工場のプレス機・射出成形機
メリット:低コスト・長寿命

2

耐摩耗性作動油

高圧・高速で稼働する環境向けに、極圧剤・耐摩耗添加剤(亜鉛系ZnDTPまたは非亜鉛系)を強力配合。油膜破断による焼き付きを防ぎます。

用途:ショベルカー・クレーン・大型重機
注意:一般作動油より高コスト

3

高粘度指数作動油

温度が変化しても粘度の変化が少ない特性を持ちます。寒暖差が大きい屋外環境や、通年で使用する設備に最適です。

用途:輸出向け機械・寒暖差の大きい屋外作業

【種類②】火災リスクを防ぐ「難燃性作動油」

高温の熱源が近くにある現場では、ホース破裂などで油が噴出した際に引火・爆発事故につながる危険があります。難燃性作動油はこのリスクを最小限に抑えるために開発された、燃えにくい特性を持つ作動油です。

JISB9938(油圧-難燃性作動油-使用指針)などの公的規格によって使用ガイドラインが定められています。

⚠️ 難燃性作動油が必要な現場

  • 製鉄所の圧延ライン
  • ダイカストマシン(金属鋳造機)
  • ガラス製造設備
  • 火力発電所・炉周辺の油圧設備

難燃性作動油の2種類

🌊 含水系(水-グリコール・エマルジョン)

水分を含有させることで燃えにくさを実現。水の気化熱で燃焼を抑制します。

  • 水-グリコール系
  • O/Wエマルション
  • W/Oエマルション

✔ メリット:コストが比較的低い

△ デメリット:水分管理が必要

⚗️ 合成系(エステル系)

水分を含まない化学合成油をベースに、高潤滑性と難燃性を両立した高性能タイプ。

  • 脂肪酸エステル系
  • リン酸エステル系

✔ 航空機・超高温環境に対応

△ デメリット:コストが高め

【種類③】自然を守る「生分解性作動油」

SDGsをはじめとする環境意識の高まりとともに急速に普及しているのが、土壌や水中の微生物によって分解される生分解性作動油です。自然環境と隣り合わせの現場での油漏れ事故による生態系破壊を防ぎます。

🌱 生分解のプロセス

油漏れ発生
土壌・水中へ
微生物が分解
水+CO₂に

エコマーク認定基準(商品類型No.110):28日以内に生分解度60%以上

生分解性作動油が特に求められる現場

  • 森林の伐採現場・林業用チェーンソー
  • 河川・ダム工事などの水辺の建設現場
  • 農業機械・トラクター
  • 海洋・港湾設備

企業が導入するメリット

📋

環境規制への対応

強化される法規制をクリアし、社会的信用の向上に貢献

🏆

公共入札での優位性

公共工事で環境配慮型資材の使用が高く評価される

💰

事故リスクの低減

油流出事故の環境修復コストを大幅に抑制できる

作動油の性能を左右する「粘度(ISO VG規格)」の選び方

種類を選んだあとに最も重要なのが粘度の選択です。粘度が不適切だと、油漏れ・油圧ポンプの異常摩耗・キャビテーションなど深刻なトラブルの原因になります。

ISO VG規格とは

「ISO VG(Viscosity Grade)」は、40℃における動粘度を基準とした国際的な粘度分類規格です(JIS K 2001準拠)。

数値が小さい = サラサラ(低粘度)  数値が大きい = ドロドロ(高粘度)

VG 22(極低粘度)
VG 32
VG 46(標準)
VG 68(高粘度)

粘度グレード別の特徴と用途

粘度グレード 粘度の特性 適した環境 主な用途 注意点
VG 22 非常にサラサラ 極寒冷地 精密制御機器 漏れリスクあり
VG 32 サラサラ・低粘度 寒冷地・低温 精密工作機器 高温では粘度不足
VG 46 ★標準 標準的な粘度 通常屋外環境 建設機械(最も多い) 極寒冷地は要注意
VG 68 やや高粘度 高温・高負荷 大型油圧設備 低温始動に不向き

⬇ 粘度が低すぎる場合のリスク

  • 油漏れリスクの増大
  • ポンプ容積効率の低下
  • 油圧の維持・調整が困難

⬆ 粘度が高すぎる場合のリスク

  • 摩擦増大による油温上昇
  • 低温時の始動不良
  • キャビテーション発生

作動油を正しく選定するための手順

1

機械の取扱説明書でメーカー指定のISO VGと種類(耐摩耗性など)を確認する

2

使用環境(気温・火気の有無・水辺の有無など)を正確に把握する

3

指定VGをベースに、環境に応じた種類をメーカーに相談して最終決定する

【早見表】現場別・おすすめ作動油の選び方

現場・状況 推奨する作動油の種類 推奨粘度グレード
一般的な屋外建設機械 石油系・耐摩耗性作動油 VG 46
北海道など寒冷地の屋外機械 石油系・高粘度指数作動油 VG 32(冬)/ VG 46(夏)
工場の精密工作機器 石油系・一般作動油(R&O) VG 32〜46
製鉄所・ダイカスト工場 難燃性・含水系(水-グリコール) VG 46(メーカー指定)
航空機・高精度油圧設備 難燃性・合成系(リン酸エステル) 機器メーカー指定
林業・河川・農業現場 生分解性作動油 VG 46が多い

※必ず機械メーカーの取扱説明書に記載された指定粘度・種類を最優先にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 作動油は何種類ありますか?

A. 大きく分けると「石油系(一般・耐摩耗性・高粘度指数)」「難燃性(含水系・合成系)」「生分解性」の3カテゴリ・全6種類があります。現場の環境・機械の負荷に応じて選択します。

Q. VG 32とVG 46の違いは何ですか?

A. VG 32はよりサラサラで低温環境・精密機器向け、VG 46は標準的な屋外作業環境向けの粘度です。日本の一般的な建設現場ではVG 46が最も多く使われています。北海道などの寒冷地では冬期のみVG 32に切り替えるケースもあります。

Q. 作動油はどのくらいの頻度で交換すべきですか?

A. 初回は使用開始から3ヶ月程度での交換を推奨します(金属摩耗による金属カス除去のため)。その後は年1回程度が目安ですが、使用環境・稼働量によって異なります。必ず機器メーカーの指定に従ってください。

Q. 種類の異なる作動油を混ぜて使えますか?

A. 原則として混合使用は厳禁です。添加剤が反応してスラッジ(汚泥)が発生したり、性能が著しく低下する可能性があります。種類を切り替える際は必ずタンクを洗浄してから入れ替えてください。

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一般的な石油系作動油から難燃性・生分解性の特殊オイルまで、豊富なラインナップでご対応します。
「ISO規格の選び方がわからない」「北海道の寒冷地に合ったオイルを探している」などお気軽にご相談ください。

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まとめ

  • 作動油には「石油系(一般・耐摩耗・高粘度指数)」「難燃性(含水系・合成系)」「生分解性」の種類がある
  • 選び方のポイントは①現場の火気・環境リスク、②稼働圧力・負荷、③使用温度帯の3つを確認することから始まる
  • 粘度はISO VG規格で選択し、一般的な建設機械はVG 46が標準。寒冷地はVG 32も検討する
  • 種類の異なる作動油の混合使用は厳禁。切り替える際はタンクの洗浄が必須
  • 機械の取扱説明書のメーカー指定を最優先に、現場環境に合わせた最適な作動油を選ぶことが安全稼働の基本

この記事で解説した公的な規格基準や各作動油の特性を参考に、お使いの機械と現場に最も適した作動油を見つけ出し、日々の安全で効率的な運用にお役立てください。