2026.07.27

フォークリフトの作動油とは?ISO VG32・46の選び方と交換時期

札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課

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札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課

出光テクニカルマスター潤滑油1級 / 2級機械保全技能士

油圧作動油・工業用ギヤ油・グリースなど幅広い潤滑剤の性能・使用・管理方法に精通した専門チーム。省エネ油の導入シミュレーションを通じ、企業の経費削減・カーボンニュートラル推進もサポート。

「フォークリフトの取扱説明書に『作動油』とあるが、具体的に何を買えばいいか分からない」——現場担当者からよく聞かれる悩みです。作動油を間違えると荷役装置の故障や高額な修理につながるおそれがあります。本記事では出光テクニカルマスター資格を持つ専門チームが、フォークリフトの作動油の選び方から交換時期、駆動系オイルとの違いまで解説します。

フォークリフトの作動油(油圧オイル)とは?役割とISO VG32・46の選び方

フォークリフトの作動油(油圧オイル)は、荷役装置(マストの昇降やチルト操作)やパワーステアリングを動かすために欠かせないオイルです。油圧とは、油を圧力媒体として力を伝える方式のことで、小さな力で大きな力を生み出せる点、遠隔操作が可能な点が大きな特徴です。油圧ポンプが生み出した圧力を、作動油という媒体を通じてシリンダやモーターへ伝えることで、重量物の昇降といった大きな動きを実現しています。

荷役装置・パワーステアリングを動かす油圧作動油の役割

作動油には、動力を伝えるだけでなく、金属部品の摩耗を防ぐ潤滑作用、内部を密閉して圧力を保つ密封作用、部品が発する熱を吸収する冷却作用も併せ持っています。荷役中にマストの上昇が鈍い、パワステが重いと感じる場合、作動油の劣化や粘度の不適合が原因になっていることが少なくありません(原因の詳細は後述します)。

一般的な粘度はISO VG32またはVG46

フォークリフトの油圧系統には、一般的に「ISO VG32」または「ISO VG46」の粘度グレード(ISO国際規格で定めた油の粘り気の指標で、数字が大きいほど粘度が高い)の作動油が使用されます。ただしメーカー・車種によって指定粘度が異なるため、必ず取扱説明書で指定粘度を確認したうえで選定してください。

詳しい種類・粘度の選定基準は別記事で解説

石油系・難燃性・生分解性といった油圧作動油の種類ごとの特徴や、粘度選定のより詳しい基準については、以下の記事で網羅的に解説しています。あわせてご確認ください。
油圧作動油(油圧オイル)とは?交換時期、種類、選び方も解説
主な作動油の3種類を用途別に解説!

油圧作動油に求められる6つの性能

作動油は単なる「動力を伝える液体」ではありません。圧力媒体液として動力を正確・安全に伝えるために、以下の6つの性能が求められます。

① 適正な粘度と温度変化への強さ

気温や油温が変化しても粘度変化が少ないこと。力を正確かつ素早く伝えるために必要な、最も基本的な性能です。

② 消泡性・圧縮性の小ささ

泡が発生しにくく、発生してもすぐ消える性質。泡が混入すると力が正確に伝わりません。作動油はほぼ非圧縮性ですが、圧縮されると伝達ロスが生じます。

③ 引火点の高さ・流動性の良さ

周囲に高温部品がある油圧装置や火気の近くでは引火点の高さが安全上重要です。低温環境では「低温流動性」も重視されます。

④ シール材・塗装との適合性

ゴムパッキンや塗装と化学的に適合しないと、外部への油漏れや塗料剥離による油の汚染を招きます。

粘度が合わないとどうなる?フォークリフトの油圧トラブルとの関係

油圧装置の作動効率には、作動油の「粘度」が大きく影響します。粘度が指定範囲からずれると、以下のようなトラブルにつながります。

粘度が高すぎる場合:内部摩擦の増大とエネルギー損失

粘度が高すぎると、内部摩擦が大きくなって発熱し、エネルギー損失が大きくなります。また配管内の抵抗が増して圧力損失が生じたり、攪拌抵抗の増加により機械効率(原動機の入力エネルギーから機械部分の摩擦損失分を引いた、有効なエネルギーの割合)が悪化したりします。制御弁やアクチュエーターの応答が遅くなる、ポンプの吸い込みが悪くなりキャビテーション(油中に気泡が発生し、崩壊する際に部品を損傷させる現象)が起きる、といった不具合も粘度過多が原因のことがあります。冬場に始動直後のパワステが重い・動きがぎこちないと感じる場合、この状態に近い可能性があります。

粘度が低すぎる場合:ポンプ内部の油漏れと容積効率の低下

反対に粘度が低すぎると、ポンプ内部の油漏れが増えて容積効率(理論吐出量から油漏れによる損失を引いた、有効なエネルギーの割合)が低下します。制御弁やアクチュエーターでも油漏れによって作動精度が落ち、潤滑性の低下による摩耗の増大、外部への油漏れ増加による作業環境の悪化も起こり得ます。夏場にマストの上昇スピードが鈍い、荷役力が落ちたと感じる場合は、油温上昇による粘度低下が影響していることがあります。

現場でできる症状チェックリスト(粘度が合っているか自己診断)

「エネルギー損失」「容積効率の低下」と言われてもピンとこない方向けに、現場で気づきやすい症状から自己診断できるチェックリストです。当てはまる項目が多いほど、粘度不適合または作動油の劣化が疑われます。

高粘度側(粘度が高すぎる)の兆候

  • 始動直後10〜15分、パワステやレバー操作が特に重い
  • 暖機して油温が上がると動きの重さが改善する
  • 冬季や早朝の稼働開始時に症状が集中している
  • レバー操作から反応までわずかにタイムラグを感じる

低粘度側(粘度が低すぎる)の兆候

  • 夏季や長時間稼働で油温上昇後、マスト上昇速度が鈍る
  • 荷役力が以前より落ちたと感じる
  • 機械周囲や継手部分に油じみ・油漏れが見られる
  • エンジン停止直後、マストがわずかに自然降下する

判断のポイント:症状が「稼働開始直後だけ」に出るなら高粘度側、「稼働が進んで油温が上がってから」に出るなら低粘度側の可能性が高いと判断できます。いずれの場合も、まずは作動油の色・量をレベルゲージで確認し、指定粘度と現在使用している油種が合っているかを見直してください。改善しない場合は、油そのものの劣化ではなくポンプやシールなど機械側の摩耗が進んでいる可能性もあるため、専門スタッフへの相談をおすすめします。

フォークリフトの作動油の交換時期・点検方法

交換の目安は6か月ごと・稼働1,200時間ごと

フォークリフトの作動油は、点検頻度の目安が6か月ごと、交換目安が稼働1,200時間または1年ごととされています。ただしこれはあくまで一般的な目安のため、メーカーや車種の規定を優先してください。稼働時間が長い運送・建機リース現場では、想定より早く目安の稼働時間に到達しているケースもあるため、稼働時間の記録をこまめに確認することをおすすめします。

レベルゲージでの点検方法と劣化サイン(乳白色・黒色変化)

作動油の量や汚れは、車体側面のオイルレベルゲージやタンクの点検窓(レベルウィンドウ)で確認できます。規定量以下に減っていないか、色が乳白色や真っ黒に変色していないかを目視でチェックしてください。乳白色への変色は水分混入のサインで、前述の消泡性・防錆性が大きく低下するため、使用量が少なくても早急な交換が必要です。黒色化は酸化劣化やスラッジ(金属摩耗粉や劣化物が混ざった汚泥状の堆積物)の発生を示しており、放置するとポンプやバルブの目詰まりの原因になります。

なお、フォークリフトは寒冷地では始動直後の油の硬さが操作性に影響するため、冬季の始動性に不安がある場合は油の状態とあわせて確認しておくと安心です。北海道での低温始動性の検証については、当社YouTubeチャンネルの動画「【省エネ×寒冷地対応】油圧作動油の低温始動性を徹底検証!」もご参考ください。(札幌アポロ公式YouTube

【商品紹介】フォークリフトにおすすめの油圧作動油

エネオス スーパーハイランド 32(低粘度・標準タイプ)

低圧〜中圧の油圧機械に幅広く対応する汎用油圧作動油です。フォークリフトを含む荷役機械・建設機械・工作機械などに使用でき、油種選定に迷った際にまず試すべき標準品として位置づけられています。低温環境では流動性の良さが操作性を左右するため、寒冷地での冬季稼働が中心の場合はまずこちらを検討してください。

▶ スーパーハイランド32 商品ページを見る

エネオス スーパーハイランド 46(高粘度・高負荷向け)

VG32よりも粘度の高いタイプで、高負荷・高圧の油圧装置や、油温が上がりやすい夏場の稼働環境に適しています。粘度が高い分、低温時の始動性はVG32よりやや劣るため、寒冷地の冬季稼働が中心の場合はメーカー指定粘度を優先しつつ、季節による使い分けを検討してください。

▶ スーパーハイランド46 商品ページを見る

フォークリフト用の油圧作動油をネットで簡単発注!

札幌アポロなら、ISO VG32・46をはじめとした油圧作動油を豊富にラインナップ。20Lペール缶からドラム缶まで、現場のニーズに合わせてお届けします。

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油圧オイル以外にもある?フォークリフトの駆動系オイル

ここまで解説してきた油圧作動油は、荷役装置とパワステを動かすためのオイルです。一方でフォークリフトには、走行のための駆動系統にも別のオイルが使われています。「作動油」と一括りにされがちですが、系統ごとに求められる性能が異なるため、油種を混同しないよう注意してください。

トルクコンバーター(流体変速機)に使うATFタイプ

トルクコンバーター(エンジンの動力を滑らかに伝える流体継手)を搭載した機種では、DEXRON-Ⅲ相当のATF(オートマチックトランスミッションフルード)タイプのオイルが使われます。粘度指数が高く低温流動性に優れているため、変速機の各部品との相性を保ちながら動力を伝達します。

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湿式ブレーキ・ギヤ・油圧駆動装置兼用タイプ

建設機械・農業機械と共通の湿式ブレーキ、各種ギヤ、油圧駆動装置を兼用できるタイプもフォークリフトに使用されます。ブレーキ鳴き防止性能や低温性能に優れ、寒冷地でのスムーズな作動をサポートします(API GL-4相当)。

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中古フォークリフト購入時のオイル選定で注意すべきこと

前オーナーの油種が不明な場合の切り替え手順

中古フォークリフトを購入した際、前オーナーがどの油種を使用していたか分からないケースは珍しくありません。同じ石油系同士であれば問題が起きにくいこともありますが、原則として異なる種類の作動油の混合は避けてください。添加剤の種類が異なると化学反応でスラッジが発生し、前述のシール材適合性や消泡性が損なわれる可能性があるためです。

タンクフラッシングの必要性

油種を切り替える際は、タンクを完全にフラッシング(内部を洗浄油等で洗い流すこと)してから新しいオイルを入れることが基本です。古いオイルや汚れが残ったままでは、新しいオイルもすぐに劣化・汚染されてしまいます。特に稼働年数の長い中古機では、フラッシングを省略すると新油の性能が十分に発揮されないため、初回交換時は必ず実施してください。

フォークリフトの作動油に関するよくある質問

Q. フォークリフトの作動油はどのくらいの頻度で交換すればいいですか?

A. 一般的には6か月ごとの点検、稼働1,200時間または1年ごとの交換が目安です。ただし機種やメーカーの規定が優先されるため、取扱説明書を確認してください。

Q. 作動油と油圧オイルは同じものですか?

A. はい、同じものを指します。「作動油」「油圧オイル」「ハイドロリックオイル」はいずれも油圧装置の動力伝達媒体を指す呼び方です。

Q. VG32とVG46、どちらを選べばいいですか?

A. まずは車両メーカーの指定粘度を確認してください。指定が不明な場合、標準的な油温環境ではVG32、高負荷・高油温の環境ではVG46が選ばれる傾向にあります。

Q. 粘度が指定と合っていないと、具体的にどんな不調が起きますか?

A. 粘度が高すぎるとエネルギー損失や応答の遅れ、始動直後の動きの重さにつながります。逆に低すぎるとポンプ内部の油漏れによる荷役力の低下や摩耗の増大につながります。

Q. 種類の違う作動油を混ぜて使っても大丈夫ですか?

A. 原則として混合使用は避けてください。添加剤が反応してスラッジが発生したり、性能が低下したりする可能性があります。

Q. 中古フォークリフトを買ったのですが、今入っている油の種類が分かりません。どうすればいいですか?

A. 油の種類が不明な場合は、タンクを完全にフラッシングしてから新しいオイルに切り替えるのが安全です。不明点は産業エネルギー課までお気軽にご相談ください。

まとめ

フォークリフトの作動油は、荷役装置とパワステを動かす油圧オイル(ISO VG32・46が中心)と、トルクコンバーターやギヤ・ブレーキを動かす駆動系オイルの2系統に分かれます。作動油には適正粘度・消泡性・圧縮性の小ささ・引火点の高さ・流動性・シール材適合性という6つの性能が求められ、これらが粘度の過不足や劣化によって損なわれると、始動性の悪化や荷役力の低下といった不調につながります。取扱説明書の指定粘度・指定油種を確認したうえで、6か月ごとの点検・1,200時間または1年ごとの交換を目安に管理することで、突発的な故障やダウンタイムを防げます。中古機での油種切り替えに不安がある場合は、フラッシングを徹底し、判断に迷う際は専門スタッフへご相談ください。

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