2026.07.27
工業用潤滑油の種類と選び方|寒冷地の注意点も

この記事を書いた人
札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課
出光テクニカルマスター潤滑油1級 / 2級機械保全技能士
油圧作動油・工業用ギヤ油・グリースなど幅広い潤滑剤の性能・使用・管理方法に精通した専門チーム。省エネ油の導入シミュレーションを通じ、企業の経費削減・カーボンニュートラル推進もサポート。
目次
「工業用潤滑油」と一口に言っても、油圧作動油からギヤ油、タービン油まで種類は多岐にわたります。設備担当者になったばかりの方や、初めて発注する購買担当者にとっては、どれを選べばいいか迷うところでしょう。この記事では、工業用潤滑油の種類と選び方、そして選定後に差がつく管理のポイントまで、現場目線で解説します。
潤滑油は、姿かたちで液体・半固体・固体に、使い道で工業用・自動車用・船舶用に分類されます。詳しい全体像は、以下の記事で解説しています。
工業用潤滑油とは?
工業用潤滑油とは、工場や産業設備などの業務用機械に使われる潤滑油全般を指し、大きく「設備油」「金属加工油」に分かれます。今回は、設備の稼働に直結する「設備油」に絞って解説します。
工業用潤滑油の主な種類【カテゴリー一覧】
工業用潤滑油は、使われる機構や用途によって細かく分類されています。まずは全体像を一覧で押さえておきましょう。
| カテゴリー | 主な用途 |
|---|---|
| 油圧作動油 | 油圧ポンプ・シリンダーの動力伝達 |
| 工業用ギヤオイル | 歯車のかみ合い部の潤滑 |
| 多目的オイル | 複数箇所に使える汎用タイプ |
| 摺動面油 | 工作機械の滑り案内面 |
| コンプレッサー油 | 空気圧縮機の潤滑 |
| 防錆油 | 金属部品の錆止め |
| 冷凍機油 | 冷凍機・冷媒との共存が必要な箇所 |
| 切削油 | 金属加工時の冷却・潤滑 |
| 熱処理油 | 金属の焼入れ・冷却 |
| 洗浄油 | 部品洗浄 |
| クリーニング溶剤 | 油分・汚れの除去 |
| 無添加オイル | 添加剤を含まないベースオイル |
| 工業用 特殊品 | 上記に当てはまらない特殊用途 |
このうち、設備の稼働に直結する主要カテゴリーを詳しく見ていきます。
油圧作動油
油圧ポンプで発生した力を、シリンダーやモーターに伝えるための油です。動力伝達に加え、防錆・冷却の役割も担います。作動油は潤滑油と対になる別のものではなく、潤滑油の一種である点に注意してください。両者の関係は、以下の記事で詳しく解説しています。
工業用ギヤオイル
歯車同士がかみ合う部分の摩耗や発熱を抑える油です。車両用のギヤオイルと粘度の基準が異なり、車両用のSAE 90は産業用のISO VG 150〜220相当とされますが、数字が近いからといってISO VG 100を代用することはできません。設備の指定粘度を必ず確認しましょう。
摺動面油
工作機械の滑り案内面など、低速で滑らせながら使う箇所に使用します。油膜切れを起こすと精度不良につながるため、油膜保持力が重視されます。
コンプレッサー油
空気圧縮機の摺動部やシリンダーを潤滑する油です。一般の潤滑油と混同して選ぶと、性能不足やトラブルの原因になります。
多目的オイル
複数の箇所に共通で使える汎用タイプで、油種を絞り込みたい現場で選ばれています。
冷凍機油
冷媒と共存する特殊な環境で使われるため、冷媒との相溶性(互いに溶け合い分離しない性質)が求められます。
タービン油については、以下の記事で詳しく解説しています。防錆油については別記事で取り上げる予定です。切削油・熱処理油・洗浄油・クリーニング溶剤は主に金属加工工程で使われるカテゴリーのため、この記事では割愛しています。
なお、グリースは液体ではなく半固体潤滑剤に分類され、工業用オイルとは別枠で扱われます。潤滑油との違いは、以下の記事をご覧ください。
失敗しない工業用潤滑油の選び方
適油選定の基本(メーカー推薦油と油種統一)
油を選ぶ際、まず基準になるのは機械メーカーの推薦油です。取扱説明書を確認し、指定の油種・粘度グレードを把握しましょう。ただし、複数の設備でそれぞれ違う推薦油を使うと、油の種類が増えすぎて管理が煩雑になり、誤給油のリスクも高まります。社内で使用油種をある程度統一する方向で選定すると、発注・管理の手間を減らせます。
ISO VG(粘度)の見方
工業用潤滑油の粘度は、ISO VGという国際規格で表記されます。40℃時点での動粘度を数値化したもので、数字が大きいほど粘度が高く、小さいほど低くなります。温度変化に対する粘度の安定性を示す粘度指数(VI)とは別の指標なので、混同しないよう注意しましょう。
現場でありがちな選定ミスと対処法
よくあるのが、廃番になった油の代替品を、粘度グレードだけを合わせて選んでしまうケースです。同じ粘度でも基油や添加剤の構成が異なれば、酸化安定性(高温でも劣化しにくい性質)や耐荷重性が変わり、数か月後に不具合が出ることもあります。切り替え時は粘度だけでなく、専門商社に相談したうえで判断することをおすすめします。
導入後に差がつく、油の管理ノウハウ
油は「選んで終わり」ではなく、導入後の管理でトラブルの発生率が大きく変わります。
確実な給油と日常点検
油量が少なすぎると潤滑・冷却が不足して油の劣化が早まり、多すぎると攪拌抵抗によるエネルギーロスが生じます。オイルレベルゲージを見やすい位置に設置し、適正レベルを明示しておくことが、日常点検を確実にするコツです。
油漏れ管理の指標「HFI」とは
油漏れは生産現場における純粋な無駄です。油の無駄遣いを可視化する指標として、HFI(Hydraulic Fluid Index、作動油消費指数)があります。これは油圧装置の総タンク容量に対して、年間でどれだけの作動油を消費したかを示す数値で、値が大きいほど油漏れや更油が多いことを意味します。減速機油や軸受油、圧縮機油にも応用できる考え方です。
性状管理基準で更油タイミングを判断する
油の色相・粘度変化率・酸価・水分量などには、油種ごとに目安となる管理基準値があります。たとえば水分量は、タービン油や汎用軸受油で0.1vol%以下が目安とされます。定期的にサンプルを採取し、基準値から外れていないか確認することで、トラブルの予兆を早期に発見し、無駄のない更油計画を立てられます。
北海道・寒冷地で工業用潤滑油を選ぶ際の注意点
寒冷地では、油の低温始動性が特に重要です。気温が下がると油の粘度が上がり、始動時に十分な油膜が形成されにくくなるためです。冬場に機械の動きが鈍くなる、始動直後に異音がするといった症状がある場合は、使用中の油が寒冷地の気温に対応しているか見直しましょう。
北海道内の企業様からのご相談も多く、寒冷地特有の運転条件に合わせた油の選定は、弊社の得意とする分野です。
まとめ
工業用潤滑油は、機構や運転条件によって最適な種類・粘度が異なります。選定時はメーカー推薦油と粘度を基準にしつつ、導入後の日常点検・油漏れ管理・性状チェックまで含めて考えることで、設備トラブルとコストの両方を減らせます。迷ったときは、専門知識を持つ販売店に相談するのが確実です。
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20Lペール缶からドラム缶まで、現場のニーズに合わせてお届けします。
工業用潤滑油に関するよくある質問
Q1. 工業用潤滑油と自動車用オイルは何が違いますか?
A. 自動車用オイルといってもエンジンオイルだけでなく、ギヤオイル、ATFオイル、ホイールベアリンググリースなど用途は様々です。どちらも耐熱性や消泡性(泡立ちにくさ)、耐荷重性など、使用される箇所で求められる特性に対応するように作られている点は共通しています。違いは使用先で、自動車用オイルはその名のとおり自動車に、工業用潤滑油は油圧・歯車・軸受などの機械設備に使用されます。規格や粘度表記の基準も異なります。
Q2. 油の交換時期はどう判断すればいいですか?
A. 使用期間だけでなく、色相・粘度変化率・酸価・水分量といった性状管理基準を目安に判断するのが確実です。基準値から外れていれば、早めの更油をおすすめします。
Q3. 少量(20L)からでも購入できますか?
A. 弊社では20Lペール缶からメーカー直送でご購入いただけます。町の小さな工場や農家の方など、少量利用のお客様にもご利用いただいています。
Q4. 複数の設備で違う油を使っていますが、統一すべきですか?
A. 可能な範囲で統一することをおすすめします。油種が増えるほど誤給油のリスクや管理の手間が増えるため、性能に問題がなければ、社内で使用油種をまとめる方向で検討してください。ただし、どの基準で統一すべきか判断が難しい場合は、無理に自己判断せず、baseoil@oil-report.co.jp まで設備の状況をお知らせいただければ、最適な油種統一の方針をご提案します。

