2026.05.15
工業用グリースの選び方完全ガイド|種類・用途・現場トラブル別に専門家が解説

この記事を書いた人
札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課
出光テクニカルマスター潤滑油1級 / 2級機械保全技能士
油圧作動油・工業用ギヤ油・グリースなど幅広い潤滑剤の性能・使用・管理方法に精通した専門チーム。省エネ油の導入シミュレーションを通じ、企業の経費削減・カーボンニュートラル推進もサポート。
「グリースを替えたのに焼き付きが止まらない」「チョコ停の原因がわからない」——こうした現場トラブルの多くは、工業用グリースの選定ミスが原因です。グリースは種類が多く、一見どれも同じに見えますが、増ちょう剤・基油・添加剤の組み合わせで性能が大きく異なります。
この記事では、出光テクニカルマスター資格を持つ潤滑剤専門チームが、種類・用途・現場トラブル別に工業用グリースの正しい選び方を徹底解説します。記事の最後には精密減速機専用グリースの紹介もありますので、産業ロボット・自動化ラインを運用されている方はぜひ最後までご覧ください。
📋 目次
そもそも工業用グリースとは?一般グリースとの違い
工業用グリースとは、産業機械・製造設備・産業用ロボットなどに使用される半固体状の潤滑剤です。ホームセンターで売られている汎用グリースとは、要求性能・耐久性・使用環境が根本的に異なります。
工業用グリースの定義と3つの構成成分
🛢️
ベースオイル(基油)
潤滑性能の核。鉱物油・合成油(PAO・エステル等)があり、温度特性・粘度を決定する。
🧪
増ちょう剤
リチウム・ウレア・カルシウムなど。油を半固体に保つスポンジ構造。耐熱性・耐水性を左右する。
⚗️
添加剤
極圧剤・酸化防止剤・防錆剤・粘度指数向上剤など。特定の性能を強化する。
一般グリース・車用グリースとの違い
| 比較項目 | 工業用グリース | 汎用・車用グリース |
|---|---|---|
| 使用温度範囲 | −30℃〜250℃以上(種類による) | 概ね−10℃〜120℃ |
| 耐荷重・極圧性 | 高荷重・衝撃荷重に対応 | 軽〜中荷重を想定 |
| 潤滑寿命 | 長期(合成油ベースは特に長寿命) | 比較的短い |
| 耐水性・防食性 | 種類別に高水準で対応 | 限定的 |
| 対応設備 | 産業機械・ロボット・精密減速機等 | 車両・家電・DIY等 |
【種類一覧】増ちょう剤別の特徴と選定早見表
工業用グリースは増ちょう剤の種類で性能が大きく変わります。「リチウムグリース」「ウレアグリース」などの名称はここに由来します。まず増ちょう剤を理解することが、正しい選定の第一歩です。
① リチウム系グリース|最も汎用性が高い万能タイプ
使用温度:−30℃〜120℃程度 / 耐水性:○ / コスト:◎ 安価
工業用グリースの中で最も広く使われる基本タイプ。一般軸受・歯車・スライド部など幅広い用途に対応。コストパフォーマンスが高く、まず検討すべき標準品です。ただし高温(130℃超)や長期無交換が求められる用途には不向き。
② ウレア系グリース|耐熱・長寿命・高速回転向き
使用温度:−20℃〜180℃以上 / 耐水性:◎ / コスト:△ やや高価
耐熱性・酸化安定性・耐水性に優れ、電動機軸受・工作機械・食品機械など高温・高速回転部位に最適。グリース寿命が長く、メンテナンス間隔の延長が可能。リチウム系と混用不可(性能が著しく低下)なので切り替え時は完全洗浄が必要。
③ カルシウム系グリース|耐水・低速・低コスト向き
使用温度:−10℃〜80℃程度 / 耐水性:◎ / コスト:◎ 安価
耐水性に優れ、水気の多い環境や屋外設備に適しています。ただし耐熱性は低く(80℃限界)、高速回転・高温部位には使用不可。建設機械・農業機械・船舶の一般給脂箇所などに多く使われます。
④ リチウムコンプレックス系|高温×高荷重の両立
使用温度:−20℃〜180℃以上 / 耐水性:◎ / コスト:△ やや高価
リチウム系の汎用性とウレア系の耐熱性を兼ね備えたハイブリッドタイプ。滴点260℃以上で、高温かつ重荷重がかかる製鉄・製紙・重工業などの過酷な部位に対応。長期潤滑寿命が求められる集中給脂システムにも適しています。
⑤ フッ素系・シリコン系|樹脂・ゴム接触部・超高温向き
使用温度:シリコン:−50℃〜200℃超 フッ素:−70℃〜300℃超 / コスト:✕ 高価
樹脂・ゴムへの攻撃性がなく、精密電子機器・OA機器・樹脂歯車に最適なのがシリコン系。フッ素系はさらに高性能で超高温・薬品環境にも対応しますが非常に高価。金属同士の高荷重潤滑には不向きなため用途を誤らないよう注意が必要です。
📊 増ちょう剤 選定早見表
| 種類 | 耐熱性 | 耐水性 | 耐荷重 | 樹脂・ゴム適合 | コスト | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| リチウム系 | ○ | ○ | ○ | △ | ◎ | 一般軸受・歯車・汎用 |
| ウレア系 | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | 電動機・工作機械・食品機械 |
| カルシウム系 | △ | ◎ | △ | △ | ◎ | 建設機械・農機・屋外設備 |
| Liコンプレックス系 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | △ | 製鉄・重工業・高温高荷重部位 |
| シリコン系 | ◎ | ◎ | ✕ | ◎ | △ | 精密機器・OA・樹脂歯車 |
| フッ素系 | ☆ | ◎ | ○ | ◎ | ✕ | 超高温・薬品環境・半導体 |
☆:非常に優れる ◎:優れる ○:良好 △:普通 ✕:不適
現場の用途・環境別|工業用グリースの正しい選び方
同じ「工業用グリース」でも、現場の条件によって最適解はまったく異なります。以下の5つの軸で順番に絞り込んでいくと、選定ミスを防げます。
① 使用温度で選ぶ
🌡️ 低温帯(−30℃以下)
低粘度合成油ベース(PAO系)。冬季工場・冷凍倉庫・屋外設備に。
🌡️ 常温〜中温帯(〜130℃)
リチウム系グリースが最もコスパ良く対応。一般産業機械の主力帯。
🌡️ 高温帯(130℃超)
ウレア系・リチウムコンプレックス系・フッ素系を検討。滴点の確認必須。
② 荷重・回転速度で選ぶ
荷重と速度は「DN値(軸受内径×回転数)」で表されます。DN値が高い(高速)ほど低粘度グリース、低い(低速・高荷重)ほど高粘度・極圧グリースが適します。
| 条件 | 推奨グリースタイプ | 代表的な部位 |
|---|---|---|
| 高速回転・低荷重 | 低粘度ベース・ウレア系 | 電動機(モーター)軸受 |
| 中速・中荷重(汎用) | リチウム系 NLGI#2 | 一般産業機械軸受・歯車 |
| 低速・高荷重 | EP(極圧)グリース・Liコンプレックス | プレス機・圧延機・建設機械 |
| 衝撃荷重 | 極圧剤配合グリース必須 | 鍛造機・クラッシャー |
| 精密・低トルク要求 | 精密減速機専用グリース | 産業ロボット関節・精密減速機 |
③ 使用環境(水・ほこり・薬品)で選ぶ
💧 水場・湿潤環境
カルシウム系またはウレア系の耐水グリース。水分侵入でグリースが乳化すると潤滑性能がゼロになる。
🍽️ 食品機械・クリーン環境
NSF H1規格取得品(食品機械用)を必ず選択。非食品用グリースの混入は重大な衛生リスク。
⚗️ 薬品・溶剤環境
フッ素系グリース。耐薬品性が最も高く、化学プラント・半導体工場に対応。
④ 接触素材(金属・樹脂・ゴム)で選ぶ
⚠️ 重要:樹脂・ゴムへの使用は素材適合性を必ず確認
鉱物油ベースのグリースや硫黄系極圧剤は、樹脂・ゴムを膨潤・溶解させる場合があります。樹脂・ゴム接触部位にはシリコン系・フッ素系・合成エステル系など「樹脂対応」を明記した製品を選んでください。
また、異種グリースの混用は増ちょう剤同士が反応し、軟化・分油・性能劣化を引き起こします。グリースを切り替える際は必ず古いグリースを完全に除去してから給脂してください。
⑤ 設備の種類で選ぶ(精密減速機には専用グリースが必須)
特に注意が必要なのが精密減速機(RV減速機・ハーモニック減速機など)です。産業ロボットの関節部に使用されるこれらの機器は、以下の3つの理由から一般工業用グリースでは性能要件を満たせません。
❶ 高精度動作のため低トルク(起動抵抗が小さい)が必要
❷ 運転中に高温・低温の両環境に晒され、幅広い温度域での安定した粘度が必要
❸ 長期稼働・長いメンテナンス間隔のためグリース寿命・設備寿命の両立が必要
工業用グリースでよくある現場トラブルと原因
グリースに関連する現場トラブルの多くは「選定ミス」か「使い方の問題」のどちらかです。代表的な4つのトラブルと原因・対策を整理します。
【精密減速機専用】DNエポネックスRG-Mが選ばれる3つの理由
産業ロボットのRV減速機・ハーモニック減速機など精密減速機は、一般工業用グリースでは性能要件を満たせないケースがほとんどです。焼き付き・チョコ停・電力ロス・設備寿命の短縮——これらの現場課題を同時に解決するのが、出光興産の「ダフニーエポネックスRG-M(DNエポネックスRG-M)」です。
📋 製品スペックサマリー
| 製品名 | ダフニーエポネックスRG-M(DNエポネックスRG-M) |
| メーカー | 出光興産株式会社 |
| 増ちょう剤 | リチウム石けん |
| ベースオイル | 超高粘度指数合成油 |
| 容量 | 16kg缶×1 |
| 主な対応設備 | 精密減速機(RV・ハーモニック等)、産業用ロボット関節部 |
| 特長 | 焼き付き防止・低トルク・疲労寿命延長の三拍子 |
理由① 超高粘度指数基油×粘度指数向上剤の最適化で「焼き付き・チョコ停」を根本から防ぐ
【なぜ一般グリースで焼き付くのか】
一般グリースは温度が上がると粘度が急激に低下し、油膜が切れて金属同士が直接接触します。精密減速機は動作中に局所的な高温が発生するため、この問題が頻繁に起こります。
DNエポネックスRG-Mは超高粘度指数(VI)を持つ合成基油と粘度指数向上剤の最適化配合により、高温でも粘度低下を最小限に抑え、安定した油膜を維持します。その結果、焼き付きによる設備停止と、潤滑不足が起因するチョコ停を同時に防止します。
理由② 常温・低温域での低トルク性能が「電力コスト削減」に直結する
【トルク抵抗と電力コストの関係】
グリースが硬い(粘度が高い)と、起動時・低温時に大きなトルクが必要になり、その分モーターの消費電力が増大します。冬期の北海道・東北の工場や低温倉庫では特にこの問題が顕在化します。
DNエポネックスRG-Mは低粘度の合成基油を採用しており、常温・低温域でのトルク抵抗が一般グリースより大幅に低いのが特徴です。駆動系の省エネ化と、サーボモーターの応答性向上が同時に実現でき、工場全体の電力削減に貢献します。
理由③ リチウム石けん増ちょう剤の高安定性が「減速機の疲労寿命延長」とメンテコスト削減に貢献
【グリース寿命が短いと何が起きるか】
グリースが早期劣化すると頻繁な交換が必要になり、人件費・グリース代・ライン停止コストが積み重なります。また潤滑性能が低下した状態で運転し続けると、減速機の歯車・軸受が摩耗し、設備の疲労寿命が大幅に短縮します。
DNエポネックスRG-Mは高品質なリチウム石けん増ちょう剤を使用し、長期間にわたって安定した給油性能を維持します。グリース交換頻度の削減が、人件費・部品費・ライン停止コストのトータル削減に直結します。耐熱性と低温特性を両立させた設計により、季節を問わず安定した潤滑性能を発揮します。
DNエポネックスRG-M(16kg缶)
焼き付き・チョコ停・電力ロスを同時解決する精密減速機専用グリース。
出光テクニカルマスター資格者が在籍する札幌アポロが取り扱っています。
※在庫状況はページにてご確認ください
工業用グリースの正しい使い方・給脂のポイント
古いグリースの除去が最重要な理由
🔩
STEP 1
部位の分解・露出
🧹
STEP 2
古いグリースをウエスで拭き取り
🧪
STEP 3
パーツクリーナーで残留グリースを洗浄・乾燥
✅
STEP 4
適量の新しいグリースを給脂・組み立て
古いグリースは酸化・劣化してスラッジ(泥状の汚染物)を含んでいます。これが残ったままでは新しいグリースも即座に汚染され、寿命が大幅に短縮されます。「足す」より「換える」が正しいメンテナンスの考え方です。
適正給脂量の目安(空間の1/3〜1/2が基本)
❌
少なすぎる
油膜切れ→金属接触→摩耗・焼き付き
✅
適正量(空間の1/3〜1/2)
均一な潤滑膜が形成され、摩耗・発熱を最小化
❌
多すぎる
過熱・分油・かき出し→漏れ・過負荷
給脂間隔の決め方
給脂間隔はメーカー推奨値を基本に、以下の現場条件で補正します。
📌 高温環境・重荷重・水気が多い → 間隔を短く設定
📌 合成油ベースの高品質グリース → 鉱物油より間隔を長く設定可能
📌 グリースの色の黒化・硬化・異臭 → 劣化のサイン。即交換
まとめ|工業用グリース選びの5つのチェックリスト
工業用グリースの選定は、現場の課題を防ぐための重要な設備管理の一つです。以下の5項目を確認してから選定してください。
✅ 工業用グリース選定チェックリスト
1
使用温度帯に合った増ちょう剤・基油粘度を選んでいるか(特に高温・低温環境)
2
荷重・回転速度に対応した粘度・極圧性能があるか(DN値を確認)
3
使用環境(水・薬品・食品・ほこり)に耐えるグリースか
4
接触素材(金属・樹脂・ゴム)に適合しているか(素材への攻撃性を確認)
5
精密減速機・産業ロボットなら一般グリースではなく専用グリースを使用しているか
グリース選定にお悩みの場合は、出光テクニカルマスター資格を持つ札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課にお気軽にご相談ください。現場の設備・使用環境に合わせた最適なグリースをご提案いたします。
精密減速機専用グリース「DNエポネックスRG-M」
産業用ロボット・精密減速機の焼き付き・チョコ停・電力ロスを同時解決。
16kg缶のご注文は札幌アポロのオンラインショップから。

