2026.07.07

作動油と潤滑油の違いを解説|代用の可否と設備別の選び方

札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課

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札幌アポロ株式会社 産業エネルギー課

出光テクニカルマスター潤滑油1級 / 2級機械保全技能士

油圧作動油・工業用ギヤ油・グリースなど幅広い潤滑剤の性能・使用・管理方法に精通した専門チーム。省エネ油の導入シミュレーションを通じ、企業の経費削減・カーボンニュートラル推進もサポート。

「作動油と潤滑油って何が違うの?」「在庫の潤滑油を作動油の代わりに入れても大丈夫?」——設備保全や購買のご担当者なら、一度はこんな疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。本記事では両者の関係性から、代用の可否、設備に合った選び方までを業務用オイル販売のプロが解説します。

【結論】作動油は潤滑油の一種|ただし「力を伝える」目的に特化した油

このセクションでは、作動油と潤滑油の本質的な関係と、なぜ流用できないのかの根拠が分かります。

潤滑油とは何か——ベースオイルに添加剤を配合した油の総称

潤滑油とは、鉱物油や合成油をベースオイル(基油)として、そこに用途に応じた添加剤を配合した油の総称です。「潤滑油」という言葉は特定の製品を指すのではなく、マシン油・ギヤオイル・タービン油・作動油など工業用途に使われる油全体のカテゴリ名です。

作動油は潤滑油の中の一分類——油圧で力を伝えることに特化している

作動油はこの潤滑油の中の一種です。油圧ショベルや油圧プレスのように、ポンプで加えた圧力をシリンダーまで伝える「動力の媒体」として機能することに特化して設計されています。油はほとんど圧縮されないため、加えた力をロスなく伝えられるという原理を利用しています。

つまり「潤滑油 vs 作動油」という対立関係ではなく、「潤滑油という大分類の中に、圧力伝達に特化した作動油がある」というのが正確な関係性です。

▼ 関係性のイメージ

工業用潤滑油(大分類)
├ マシン油(軸受・摺動面の摩擦軽減)
├ タービン油(タービン・油圧機器)
├ ギヤオイル(歯車の摩耗防止)
├ 摺動面油(工作機械のすべり案内面)
油圧作動油(油圧で力を伝える + ポンプ内部の潤滑も担う)

項目 作動油 その他の潤滑油(マシン油・ギヤ油など)
分類 工業用潤滑油の一種 工業用潤滑油の一種
主な目的 油圧による動力の伝達 摩擦軽減・摩耗防止
重視される性能 適正粘度・消泡性・酸化安定性・水分離性 油膜強度・極圧性・防錆性
使用箇所 油圧ポンプ、シリンダー、建機、プレス機 軸受、歯車、摺動面など

目的が違うから添加剤の設計も違う——これが「流用できない」根拠

ベースオイルは同じ鉱物油でも、配合する添加剤がまったく異なります。作動油には消泡剤(泡の発生を抑える)・水分離剤(水と素早く分離する)・酸化防止剤などが配合されており、ギヤ油やエンジンオイルとは設計の方向性が根本的に違います。粘度が近い油でも代用できない最大の理由はここにあります。

潤滑油の役割は摩擦軽減だけじゃない|5つの働きと主な種類

このセクションでは、潤滑油が果たす役割の全体像と工業用潤滑油の分類が分かります。

潤滑油の5つの働き(潤滑・冷却・防錆・密封・清浄)

潤滑油の働きは摩擦軽減だけではありません。以下の5つの機能を同時に果たしています。このため、潤滑油が劣化すると摩耗だけでなく、オーバーヒートや錆の発生など複合的なトラブルにつながります。

① 潤滑

摩擦・摩耗を防止する

② 冷却

摩擦熱を逃がす

③ 防錆

金属表面を錆から守る

④ 密封

隙間を塞ぎ圧力漏れを防ぐ

⑤ 清浄

摩耗粉などの汚れを洗い流す

工業用潤滑油の主な分類

工業用潤滑油は用途別に細かく分かれています。ベースオイルに配合する添加剤の種類と量を変えることで、それぞれの用途に最適化された製品になります。名前が似ていても安易に流用できないのはこのためです。

種類 主な用途
マシン油 汎用工作機械の軸受・摺動部全般
タービン油 蒸気・ガスタービン、油圧機器
ギヤオイル 歯車装置(減速機・変速機など)
摺動面油 工作機械のすべり案内面(スティックスリップ防止)
作動油 油圧システム全般(本記事のメインテーマ)

潤滑油の役割・種類・特徴についてさらに詳しくは潤滑油とは?潤滑油の用途、種類、特徴を徹底解説をご覧ください。

作動油(油圧作動油)の種類と用途——何が違い何に使うのか

このセクションでは、作動油の種類ごとの特徴と、どの現場に何を選ぶべきかが分かります。

一般作動油(R&O形)——汎用の基本

R&O形(防錆・酸化防止剤を配合した形式)は、最も基本的な作動油です。低圧〜中圧の一般的な油圧システムに使われますが、高圧ポンプへの耐久性は高くないため、現在の産業設備では耐摩耗性作動油に置き換えられているケースが多いです。

耐摩耗性作動油(AW形)——高圧ポンプ対応の現在の主流

耐摩耗添加剤を加えたAW(Anti-Wear)形は、現在最も広く使われている作動油です。産業機械の高圧化が進んだという理由で、一般産業機械・油圧プレス・建設機械など幅広い用途の標準品となっています。

高引火点油——消防法の指定数量対策が必要な現場に

引火点(油に火がつく温度)が通常の作動油より高く設計された油です。消防法では引火点によって危険物の指定数量が変わるため、工場内の保管量が多い事業所では高引火点油を採用することで規制への対応が容易になります。

生分解性作動油——ダム・港湾など環境負荷を抑えたい現場に

植物油脂や合成エステルをベースにした、土壌・水中での分解性が高い作動油です。ダムや港湾の水門設備、森林作業機械など、漏油が自然環境に直接影響する現場での使用が義務付けられているケース、または推奨されているケースがあります。

難燃性作動油——炉や高温設備の近くで使う特殊用途

鉄鋼・アルミ製造など、炉の近くで作動油が高温金属と接触するリスクがある環境では、水グリコール系・リン酸エステル系などの難燃性作動油を使います。通常の鉱物油系作動油と添加剤の性質が大きく異なるため、切り替えの際は機器のシール材・塗装との適合確認が必須です。

作動油の種類・用途については主な作動油の3種類を用途別に解説もあわせてご覧ください。

作動油の代用は原則NG!誤使用が招く3つのトラブル

このセクションでは、代用がNGな理由と、例外として認められるケースが分かります。

なぜ他の潤滑油を代用できないのか——添加剤の設計の違いが原因

先述の通り、潤滑油はベースオイルへの添加剤の配合で用途特化しています。たとえばエンジンオイルには清浄分散剤が多く含まれており泡立ちやすい一方、作動油には消泡性(泡をすばやく消す性質)や水分離性が求められます。泡を含んだ油は圧縮されてしまい、力の伝達効率が落ちるという理由で、油圧システムには専用の作動油を使うべきです。

誤使用が招く3つのトラブル(ポンプ摩耗・キャビテーション・シール劣化)

① 油圧ポンプの異常摩耗

油膜不足によりポンプ内部の金属同士が接触し、摩耗が急速に進行する。

② キャビテーション

気泡(キャビテーション)の発生・破裂が繰り返され、部品表面が侵食される。異音や振動の原因にも。

③ シール(パッキン)の劣化

油とゴム材質の相性不良により膨潤・硬化が起こり、油漏れにつながる。

ポンプ交換となれば部品代と設備停止のダブルの損失です。油剤の単価差より故障リスクのほうがはるかに高くつきます。

例外ケース——一部の建設機械メーカーがエンジンオイルを推奨する理由

「代用は原則NG」と述べましたが、例外も存在します。一部の建設機械メーカーでは、作動油用途にエンジンオイルを指定・推奨しているケースがあります。これは当該機械の油圧システムがエンジンオイルの添加剤特性に適合するよう設計されているためで、「メーカーが認めているから使える」のであって、任意の代用とはまったく別の話です。必ず機械の取扱説明書の指定に従ってください。

作動油の選び方は「指定銘柄→粘度→使用環境」の3ステップ

このセクションでは、粘度と粘度指数の正しい理解と、設備に合う油の選び方が分かります。

粘度(VG)とは——油の硬さを表す数値、高いほど硬い

ISO粘度グレード(VG)は、油の動粘度(どのくらい流れにくいか)をシンプルに数値化したものです。数字が大きいほど油が硬く(粘り気が強く)、小さいほど柔らかい(サラサラ)です。作動油でよく使われるのはVG32・VG46・VG68の3種です。

粘度グレード 主な使いどころ
VG32 低温環境・高速運転の設備、寒冷地の屋外機器
VG46 標準的な屋内設備(最も汎用的)
VG68 高温・高負荷の設備

粘度が低すぎると油膜切れによるポンプ摩耗、高すぎると圧力損失やキャビテーション(油中に気泡が発生し部品を傷める現象)を招くため、メーカー指定の粘度を守ることが大原則です。

粘度指数(VI)とは——粘度と混同しやすい、温度変化への強さを示す別の指標

粘度指数(VI:Viscosity Index)は、粘度とはまったく別の指標です。「温度が変化したときに粘度がどれだけ変化しにくいか」を表す数値で、高いほど温度による粘度変化が小さいことを意味します。

指標 意味 数値が高いと
粘度(VG) 油の硬さ(流れにくさ) 硬い(粘り気が強い)
粘度指数(VI) 温度変化による粘度の変化しにくさ 温度が変わっても粘度が安定している

たとえばVG46の油が2種類あっても、粘度指数が高い油は冬の低温でも粘度が上がりにくく、夏の高温でも粘度が下がりにくい安定した性能を発揮します。粘度(硬さ)と粘度指数(変化しにくさ)は似た言葉ですが、まったく別の概念です。

粘度(VG)と粘度指数(VI)の違いについてはVGとVIの違いを詳しく解説もあわせてご覧ください。

寒冷地・屋外設備で粘度指数が重要になる理由(北海道企業の知見)

冬季の屋外設備や寒冷地の工場では、粘度指数の高い油の選択が特に重要です。気温が低いと粘度指数の低い油は急激に硬くなり、ポンプの吸い込み不良や始動不能につながるためです。北海道で多くの工場・現場に油剤を供給してきた経験上、寒冷環境では粘度グレードのワンランク引き下げに加えて、高粘度指数タイプの検討をあわせておすすめします。

実際に低温環境での作動油の挙動を検証した動画がこちらです。省エネ油と汎用油の低温始動性の差が一目で分かります。

おすすめの業務用作動油

業務用通販BASE OILで購入できる代表的な銘柄を紹介します。

商品名 特徴 向いている用途
エネオス スーパーハイランド 32/46/68 耐摩耗性作動油の定番。粘度ラインナップが豊富 一般産業機械・油圧プレス全般
コスモ ハイドロAW 46 耐摩耗性に優れた汎用作動油 標準的な屋内油圧設備
出光 スーパーハイドロST 32 省エネタイプ・高粘度指数。低温始動性に優れる 連続稼働・寒冷地の油圧ユニット

なお、省エネタイプやロングライフタイプは汎用品より単価が割高になる点には注意が必要です。稼働時間が短い設備では電力削減メリットが出にくいため、連続稼働設備から優先的に導入するのが費用対効果の高い使い方です。

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作動油の交換目安は白濁・変色・異臭のサインで判断

このセクションでは、交換時期の判断基準と大容量購入時の保管のコツが分かります。

劣化の見分け方と交換時期の目安

作動油は以下のサインが出たら交換のタイミングです。見た目に問題がなくても酸化劣化は進行するため、目安として1年以内の定期交換をおすすめします。交換時期の詳しい判断基準は油圧作動油とは?交換時期・種類・選び方も解説もご参照ください。

▼ 劣化チェックリスト

白濁している(水分混入のサイン)
☑ 黒っぽく変色している(酸化劣化のサイン)
☑ 焦げたような異臭がする(高温劣化のサイン)
☑ 前回交換から1年以上経過している

ペール缶・ドラム缶で購入する際の保管の注意点

業務用はペール缶(20L)やドラム缶(200L)での購入が単価面で有利です。ただし屋外保管では缶の天面に水が溜まり、温度変化で内部に水分を吸い込む「呼吸現象」が起きるため、屋内保管または横倒し・雨除けでの保管が鉄則です。

作動油と潤滑油の違いに関するよくある質問(FAQ)

Q1. 作動油とタービン油は何が違いますか?

A. どちらも同じベースオイルに異なる添加剤を配合したものです。タービン油は防錆・酸化防止を主眼に、作動油は消泡性・水分離性・耐摩耗性をより重視して設計されています。ベースオイルの出発点は共通ですが、用途特化の方向が違います。

Q2. 粘度(VG)と粘度指数(VI)は何が違いますか?

A. 粘度(VG)は油の硬さそのものを表す数値、粘度指数(VI)は温度が変化したときに粘度がどれだけ変化しにくいかを表す別の数値です。寒冷地では両方の観点で選定することが重要です。

Q3. メーカー指定の銘柄が廃番・入手困難な場合はどうすればいいですか?

A. 同等規格・同粘度の代替銘柄を選定します。BASE OILではエネオス・出光・シェル・コスモ・モービル各社品を扱っており、代替品のご相談も可能です。

Q4. 作動油はどのくらいの頻度で交換すべきですか?

A. 使用環境によりますが、最長でも1年以内の交換が目安です。白濁・変色・異臭があれば期間内でも即交換してください。

Q5. ペール缶とドラム缶、どちらで買うのがお得ですか?

A. 使用量次第です。単価はドラム缶が有利ですが、開封後の劣化や保管スペースを考えると、月間使用量が少ない場合はペール缶のほうが結果的に無駄がありません。

まとめ|作動油は潤滑油の一種——目的と添加剤の違いが選定の鍵

作動油は潤滑油という大分類の中の一種であり、油圧による力の伝達に特化した添加剤設計がされています。代用が原則NGなのは、ベースオイルが同じでも添加剤の設計がまったく異なるからです。選定は「指定銘柄→粘度VG→粘度指数VI(特に寒冷地)」の順で確認すれば失敗しません。迷ったときは確実に適合する銘柄を選ぶことが、最善のコスト対策です。

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